2015年11月30日

勝手にKDP本レビュー★20小当二通「ようこそ喫煙所へ」

年末進行の真っ只中での久々のブログ更新。年内に200本目の記事を書きたい。
ちなみにこいつが196本目。

今日は小当二通さんの「ようこそ喫煙所へ」のレビューでも逝ってみましょうか。
ちょうど20作目のレビューっすか。
素朴な表紙とは裏腹に、非常に良くできた短編だったので、是非という。自殺を考えていた圭一が高校時代の友人、茂明から、もう一人の友人・裕司の死を聞かされ行動する物語。この喫煙所というのは高校時代の3人の溜まり場であり、物語の核になる場所だったりするわけです。

印象としては、上手いな、というのが第一にきます。文章も明確で描写も上手い。地力の高さを感じます。若干、冒頭の重厚な描写が後半は若干パワーダウンした感はありますが、とにかくグイグイ引っ張っていく力を感じます。
3人のキャラはいわゆる「良い子・悪い子・普通の子」という鉄板なんですが、中でも悪い子ポジションの茂明のキャラクターがすごく良い。程よくシニカルでぶっきらぼうで良いヤツ。
加えて、いいなと思うのは、普通に考えればエピソードが全然足りてないのに、3人の関係に説得力を持たせられていること。私なら、ラストに向けてもっと3人のエピソードを積み重ねると思うんですよ。回想を多めに入れたり、キーになるエピソードやアイテムを揃えたり。今回は、そういったものがなくてもそれほど少ないのに違和感がほとんどなかった。若干、裕司については何か欲しかった気もしますけど、問題なしというか、力業でねじ伏せられてしまった感じ。
ここら辺は筆力のなせるわざというか。

賛否が出そうなのはラストの展開何でしょうが、個人的には、もっと純文学的に地に足の着いた展開や描写でも良かったかな、と思います。あるいは、もっと軽い文体にできれば、より詩的な感じがしてしっくりきたのかな、とか。



とはいえ、すげーなと。何気にこれだけ上手いのにホラーやラノベまで書ける懐のある人なんで、ガンガン作品をリリースして欲しいです。

追伸☆と思いきやペンネームが変わっていてびっくり
ラベル:Kindle KDP 純文学 青春
posted by ヤマダマコト at 11:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月24日

勝手にKDP本レビュー★19犬吠埼一介「蛮勇は世界を巡る」

ちょっと多忙につきブログの更新ペースが遅めです。そろそろ焼きそばネタも尽き、外を出歩くのも厳しい季節でローカルネタもあまりなく、本当に時間がないのでテンパり気味です。

犬吠埼一介さんの「蛮勇は世界を巡る」を読了しました。
相変わらずサクサク読める程よい分量で楽しかったです。火星入植前夜の様々な利権争いが渦巻く近未来の騒動を描いた物語。
着想の原点は竹取物語のようですが、それを踏まえて深読みすると、面白いですよね。カグヤの存在とか。実は凝った裏設定とかありそうですし。リーの過去も気になります。
そういうわけで、基本的に物語進行上のテンポを乱したりメッセージ性が分かりにくくなるような情報は極力廃しているので、むしろ語られない背景が気になりますね。
この世界観だけで、長編かけそうな勢いです。
ストーリー的には、カグヤとは違うイデオロギーのリーが関わるデイドリーマーがカギになるという。起承転結をきっちり決めたところがすっきりしてて、これ以上、口を挟むのは難しいんじゃないかなと思います。
本音は、これを核に肉付けしまくって長編に仕上げて欲しい気持ちもあります。
このデイドリーマーのアイデアと火星開拓だけで、すごく想像力が膨らむというか、この組み合わせはすごく好きです。もっと世界観的に荒廃した殺伐とした雰囲気を強くしても良かった気もします。そうすれば、デイドリーマーの意義や「希望の象徴」としての火星の存在感が強まったかも。ただ、そこに凝り出すと、長編になっちゃいますよね、やっぱり。
でも、この間の王冠も踏まえ、こういう作品がずらっと並べられるナイン構想の方が野心的で面白いのも事実。とくに専用端末でないスマホで読むには長編って意外にしんどいんですよね。このテンポの良さで次々とストーリーを繰り出すのは、スティーヴン・キングのいくつかの中編集みたいだし。
このスタイルからは、長年、同人を含め創作に携わってきた犬吠埼さんの矜持を感じます。
それにしても、この尺と、ケレン味のない素直なストーリーと世界観、明確なメッセージ性と、今の若い子に向けた寓話的な感じがします。



そういえば、間もなく新作のリリースができるかもしれない。
今回はタイミングが命なんで、ダメなら来年まで凍結するかもしれませんが、多分、大丈夫かと。
posted by ヤマダマコト at 11:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月13日

勝手にKDP本レビュー★18夏居暑イディオット改訂版

夏居暑さんのイディオット改訂版を読了。
ストーリーとしては、記憶のない男、波多野が謎の男2人組に命を狙われるというシンプルなもの。なぜか波多野のことを知ってるガールフレンドがヒロイン。
時間が飛んだり、巻き戻ったり、さらにあえて読者をコンフューズさせる演出が序盤に仕込まれていたり、かなり凝ったかたちで伏線が盛り込まれていたり、退屈させない物語でした。意外な展開で見せ方は面白いですが、そこまで捻くれたことはやってないです。
そういえば最近、似たような設定のKDP本を、とか迂闊なことを言うとネタバレになってしまうデリケートな作品でもあります。

夏居さんといえば、以前もPS03をレビューさせていただきましたが、多分、こっちの作風の方が得意な気がします。シンプルですが、終始緊張感を孕んだ文章で一気に駆け抜けていく感じが良い。
ソツのない設定やクールな描写は、伊坂幸太郎的な趣きがあります。このネタならインパクト狙いで怪獣や宇宙人を出してもいいところを、あえてスタイリッシュに見せるところも、すごくカッコいいっす。とくに「丹波県」は見事。牛野さんのターンワールドっぽけど。
そういう意味で、エンタメ性ではわかりやすくユニークなPS03に軍配ですが、完成度は絶対にこっち。

ただ、最序盤でもっとインパクトが欲しかったですよね。割とありがちな感じで、正直、夏居さんの作品でなければ、この時点でテンション下がり気味だったかも。
あと、PS03のときも、もっと悪ノリして欲しかったみたいな感想を書いたと思うんですが、今回もこの設定なら、あえて、もっとドラマティックにした方が面白い気がしました。むしろ、ネタ的に本意ではない可能性もありますけど。
とくに、ラストの波多野が選択する場面。判断や感情の動きは決して不自然ではないですが、もっと葛藤させても良かったし、前段でさらにエピソードを重ねておけば、もっと女性ファン歓喜の作品になった予感。


なんだか凄く90年代的な雰囲気で面白いです。角川ホラー文庫とか好きな人向けかも。
ラベル:ミステリ KDP Kindle
posted by ヤマダマコト at 13:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする