2019年05月03日

「東京フラッパーガールlite 浅草ブラン・ノワール」デレなかった!

というわけで、以前にどこかのタイミングでDLしていた杉浦絵里衣さんの「東京フラッパーガールlite 浅草ブラン・ノワール」を読了しました。
あれです。すごいポップな表紙と先の大戦前の昭和レトロな世界観のラノベミステリーという、まさにセルパブを象徴するような人気シリーズの1冊であり番外編というか、そんな感じの作品。



結論から言えばシリーズの中では1番好みでした。
で、これを真っ先に書かにゃいかんのですが、以前に1作目のレビューを描いた時に「デレるの早くね?」って突っ込んで、おそらく杉浦さん本人に不本意な思いをさせたんですよ。あれについては、作者の欲望が溢れすぎというか、こう、バディ物としての体裁をぶっ壊すのが、いわゆるエンタメの文脈よりもかなり早くてびっくりしたんですね。
んで、続編の2は続き物ですが、やはり同じ印象がありました。上海が舞台で1のコンビというかカップルが離れ離れで、片方が上海で事件に巻き込まれる展開なんですが、こういうのって中盤あたりにコンビ復活の盛り上がりを仕込みたいし、それまでは上海ですれ違いが何度もあって、読者にじれったさを感じてもらうのがお約束な感じなんですが、割と早いタイミングであっさり合流してしまいます。
それは良し悪しではなく価値観の違いなんでしょうね。杉浦さんの中では「2人揃ってからが本番!」みたいな。やっぱ、杉浦さん歪みねえな、っていうか、自分の描きたいものを貪欲に追求したんだろうと。おそらく本人も分かった上で確信犯的にやってるんだと思います。だから、こうして一般論で突っ込むのは野暮なんですよ。それは自覚しています。

そんな中で、この「浅草ブランノワール」ですがliteと銘打ってる通りに軽めで、これまでのストーリーの中では短め。しかも番外編なので、基本的に2人の関係性が劇中で変化させられなかったので「デレ少なめ」。その結果、暴走する環お嬢さんと葛葉のツッコミキャラがすごく明確で良かった。というか役回りがしっかりしているので、ミステリ部分に純粋にのめり込める感じ。いや、別にデレるのは悪ではないんですよ。多分、それを楽しみにしているファンもいっぱいいるはずだし、そういう人には物足りないかもしれない。でも、今回はキャラクターの関係性が安定していたので本筋に入りやすかったし、個人的にはこっちの方が好き。
そう考えると、やっぱり確信犯というか、「セオリー?知ったこっちゃねえ」ということなんだろうな、と。もう「昭和初期のライトなミステリ」の皮を被ったフェティシズムの集合体みたいな感じ。その証拠に、杉浦さんのこのシリーズ以外の作品はデレるの早過ぎない。やっぱり、分かった上でやってるんだと。

それと、この軽めでスケールの小さなストーリーが文体やキャラクターに合っているのが良かった。もともと当時の世相や風俗を丹念に取り上げるのが魅力なんだけど、今回、環お嬢さんがお節介を焼く瞳子というもう一人のお嬢さんがいて、その境遇や性格が当時の雰囲気を地に足のついたかたちで表現しつつ環と対比させることで、環自身の魅力を再認識させるあたりがすごく良いし、スケールの小さい事件だからこそ、より細やかな市井の空気が描写できるんだろうと。
それも相まって、なんていうか、私がこのシリーズに抱いていたファーストインプレッションに近い作品だなと。個人的には1や2みたいな作品は数年に一回のスペシャル版にして、このくらいのスケールの作品をいっぱい書いたら面白いだろうなと思いました。



ちなみに1作目はこちら。
posted by ヤマダマコト at 15:16| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする