2015年03月02日

勝手にKDP本レビュー2★チョコレートの天使

まち歩きもひと段落ということで、やっぱり読書の時間。
KDP本レビュー第2弾は赤井五郎さんの「チョコレートの天使」。バレンタインには読了が間に合わなかったけれど、面白かったので。

赤井さんの作品は無料キャンペーンなどで読む機会が多いので、その作風や技量は知ってました。だから赤井ブランドの安心感はありましたし、なにより虫がたくさん出てくるところにそそられました。
加えて700枚超の長編というのも気になったところ。赤井さんの作品はどれも、ミステリ色強めで、はじめに「いかに楽しく読者を驚かすか」を第一にあらすじを組んで、そこから舞台やキャラ逐次投入しているイメージが強かったんですよ。
あんまり演出や雰囲気にこだわらない方という印象がありました。
その分、ミステリマニア的に読者にサプライズを与えることに腐心している感じというか。
文章もシンプルで読みやすさを第一にし、そこまで描写にこだわっていないというか、読者の想像力と言葉の力を信じ、最低限に抑えているような気がします。
そんな方が500枚を超える、しかも異世界ファンタジーを書くとどうなるか興味深いし、作品紹介から伝わる熱量も、「読め」と言わんばかりで購入してしまいました。

内容は、工業製品の多くが昆虫で製造される異世界を舞台にした物語で、不思議な力を持つ魔女に多くの人間が関わっていくというもの。
表題のチョコレートは、あくまで膨大なエピソードにおいてはサブプロットの一つではありますが、結果的に印象的な役目を果たすことになります。
三人称の複数視点で物語は進み、とにかく登場人物が多く、一人一人が魅力的で濃いんです。個人的には宿屋のジル婆さんと盲目の天才推理少年ツインズ•ワン、それに後半の主役的な二人の刑事と書師なんかは印象的でした。あと酒場のサージェスとかいうおっさんはなぜか私の中では阪神のマートンに変換されてしまう不思議。
赤井さんらしく読みやすく、ちゃんと時間軸と視点人物をきっちり章でわけ、回想なんかも時系列を明確にして非常にわかりやすい。それに章わけが細かいので出先で読みやすいのもポイントが高いです。
そして、物語の展開はなんだかんだで赤井作品らしいと思いました。
世界観も丹念に描写されていて、とくに序盤は、愛娘復活の可能性を魔女に賭ける元虫技師ニコラを通じて、虫の加工や非合法な酒の密売などを丁寧に説明したのはうまかった。彼を前半の主役的なポジションに置いた理由はそこが狙いだったのだろうと思います。
ただ、このニコラのポジションには弊害もあって、物語が動き出すまで時間がかかるんです。物語の最初の転機となる殺人事件が起こるのが中盤というのは、せっかちな読者にはどうなのかなぁ、という。
そこまでは、ニコラが魔女を探す物語なのかな、と勝手に思ってました。個人的には、もう少し早い段階で物語の方向性を示して欲しかったです。
登場人物も、一人一人を丹念にバックボーンまで描写する筆力は流石ですが、やっぱ多い気がします。私のツインズ•ワンが終盤空気なのは、ちょい悲しかったし、群像劇であっても軸になる人とサブは明確に分けて欲しかった。
そして私のツインズ•ワンを主役級にしてくれ、してください。頼みます。というか各キャラがそれぞれ長編の主役はれる逸材ぞろいですからね。
あと要望があるとしたら虫です。虫で作った製品で溢れ、チョコレートのある世界って映像化したら、すごい絵になりますよね、絶対。その辺の面白さをもっと描写して欲しかった。甲虫のヤカンとか、どんなのか見てみたいですもん。

全編を通じて優しい上品な描写で描き、最後にピタピタとジグソーパズルみたいに伏線を回収するあたりは、流石というか、憧れます。

最後に余談ですが、タイトルは読んだ今、これがベストだと思うけど、なんか恋愛小説と勘違いされないもんでしょうかね。すごく心配。本当に良い作品だけに。



これで250円は安いと思います。

posted by ヤマダマコト at 14:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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