実はSFってあんまり得意じゃないんですよ。
もともと小学生のころにE・Eスミスのレンズマンの児童文学版読んだり、流れでスカイラークシリーズを読み、80年代90年代のロボットアニメの洗礼を受け、アシモフとかクラークとかハイラインとか定番をおさえるくらいしか読んでないんですね。
映画もそんなに詳しくない。
ただ天体観測は好きで、そういうニュースはテンション上がるんです。科学雑誌もなんだかんだで好きでですし。
だからケプラー186fのニュースは興奮しましたし、それをテーマにした作品ということで興味があったという。
ただ、その程度のライトなファンなんで、極めて普通の小説として楽しませてもらいました。
ストーリーは地球を放棄した地球人の同星への移民船内から、入植、未知の原住生物との遭遇、人類の同星でのあり方を示す物語。
移民については新大陸発見時のネイティブアメリカンとの衝突なども下敷きにしていて、非常に流れは把握しやすいし、物語の核もすぐに予想できます。となれば結末も分かりそうなものですが、そこに意外性があるという。
大きなカットバックが序盤にあるものの、基本的には時系列に沿って進みます。
驚いたのは、これだけのスケールの大きな展開を一本の作品に収める力技。
いや、普通は難しいですって。かなりの冒険。
これだけのスケールの中で、どこを切り取るか、どこにフォーカスするか。
そういう風に考えるところを「全部」という男気。広島の黒田もびっくり。
で、普通なら描写が散漫になったり、物語が観念的になりすぎたり、ドラマが作れなかったりしそうなところを、ちゃんと正面から書き切るという。多分、原稿用紙換算で650枚強くらいですかね。
とにかく設定が凝ってます。
着陸後の居住用入植船の設定とか、航海中のコールドスリープのサイクルとか。それだけで長編一本書けそうなネタが次から次へと。
かといってSFにありがちな造語や専門用語は控えめで読みやすい。その辺は造語も略称も徹底的に配慮している感があってSF初心者も安心。
人間ドラマもそう。海外ハードSFみたいな突き放したものではなく、かといってドロドロしたものでもない。極めてノーマルでやや軽めなんです。
この軽めが重要なんです。ただでさえ重いSF長編でドロドロした人間ドラマをやられるとしんどい。しかも、これだけの要素をパンパンに詰め込んでいるわけで。
なら、テーマを絞って書き込めばいいじゃん、って思うかもしれません。たとえば、移民船の途中で起きたアクシデントだけに絞るとか、着陸後の異星人との戦闘に絞るとか。
私も途中までそう思いました。
100年とか200年に渡る壮大なストーリーを複数の主人公の視点で進めるとかね。そうすれば、人間の価値観の変化も描けるし、コールドスリープを使った時代をまたぐキャラも作れるんじゃないかと。
でも、最後のエピローグ的な部分まで読んだ時に、淡波さんの思いというか狙いが分かります。多分、この物語をどれだけ壮大にしても個人の物語にとどめておきたかったというか、あくまで主人公のソーとヒロインのケイトの物語であることにこだわりたかったんだろうな、という。
個人的には登場人物の中でクラーク・ラウが好きです。ああいうキャラが好みです。もっと活躍?して欲しかった。いかにも西洋人的な価値観の持ち主で、いいキャラでした。
というか、ラストはすごくインパクトがあるというか、いろいろ賛否があってもおかしくないオチなんで、そこに至るまでに、もっと色々、選択への葛藤というかラウさんの大活躍が欲しかったっす。
余談ですがKDP本で伝奇ホラーや伝奇ファンタジー探してます。オススメがあったら教えてください。絶対に読みます。SFとか異世界ファンタジーは多いんですけどホラー系は少ない気が。