2015年04月09日

勝手にKDP本レビュー5★月の精アリサと七つの夜の物語

久々でもないですがKDP本で面白い作品を読ませていただいたので。
たまにはタイムリーなものもね、っていう。
今回は花笠香菜さんの「月の精アリサと七つの夜の物語」
1日に出たばかりですが、それ以前から予約を受付してたんですよね。
でも予約システムがよくわからず、結局、初日の朝、寝起きにポチったという。表紙とタイトルで面白そうオーラが出ていたし価格も手ごろだったので密かに目をつけていました。

作品としては児童文学書なんですよ。優しい雰囲気のファンタジー小説で、表紙にも描かれている不思議な女性のアリサと少年セシルが月夜に繰り広げる異世界探訪というか。
月夜の夢と現実の狭間を行き来するような物語にしたかったのかな、という気もします。
それぞれ1夜が1エピソードで計7本の短編連作になっています。最後にエピローグ的な章がある感じ。
それぞれのエピソードにちゃんとメリハリが効いていていて、良いんです。
そして最後の夜はベタですが盛り上がる演出多数でアツいです。それぞれの演出は割とベタなんですが、天丼的に重ねられると、やっぱり盛り上げますよね。すごく楽しい。

あと主人公のセシルとしずかちゃんポジションのキャリー、出木杉くんポジションのリッチーの微妙な関係の変化がサブプロットとして仕込まれていていい感じ。
最後の夜に、そのバランスが一変しちゃったのは個人的な好みとしては残念ですが、それまでの経緯を考えれば仕方ないのかな、と思うし、ここはもう好みの問題。

全編通じて、すごくポジティブで優しい展開なんですよね。
昭和のアニメで育った立場からすると、因果応報が足りずもやっとする部分が少しありますが、ここは今風なんだろうな。最近の子どもは逆にこういう物語の方が喜ぶんじゃないかな、と思いました。
物語の核になるヒロイン・アリサも表紙絵のイメージ通りだし、非常に癖の少ない良キャラクターで大安定。

細かい設定とかも分かりやすくシンプルながら凝ってます。夜空と月の描写や設定もそうですが、フレッツェル通りの雰囲気とかも良い感じ。かなり明るく優しい世界観。ただ物語は半分以上夜空が舞台なんですけどね。
個人的には4話の「宝石の国」が好き。銀河鉄道999的な展開を見せつつも、しっかり良い感じで締めていて良かったです。
児童文学的には割と低学年でも読めるような感じがします。個人差ありますけど。表紙が綺麗なんで、3年生くらいの女の子が少し背伸びして読んじゃえる感じがします。大人でも楽しめますけどね。
だからこそ、3人の関係は元通りというか、こうね。その辺で良くね?っていうか。

気になったのは、アリサがセシルの家に来た理由がやや希薄な気がしたこと。後半、なんかアリサ本人に関わるストーリーがあるのかと思ったから、ちょっと肩透かしを食った感はあります。うーん。ミステリアスなのも魅力だし、これはこれで良いのかもしれないけど。
あと、セシルとアリサの交流をもっと描けば、それぞれのエピソードがもっと深みが増すような気もします。特に4話のラストはちょっと唐突というかデレデレ感が強めだったような。
でも、児童向けだと、テンポとか尺とか考えるとこれくらいの方がいいのかなぁ。想像の余地を残すというか。
全体のクオリティを考えると、その辺はすごく惜しかった。

そうそう興味深いのは作品に合わせて表紙を用意したのではなく、イラストレーターの秋野由布子さんが描いたイラストから物語を紡いだというところ。結構、そういうところからの着想ってありますもんね。
拙作「団地のナナコさん」もスピッツの初期作品「夏の魔物」がベースですもん。
で、このイラストの雰囲気を物語に落としこむ作業をすごく丁寧にやられているな、と。
背景から小道具までうまく生かしていて素敵です。



これはタブレットとかに落として子どもに読ませてもいいし、旅行先で寝れない夜にのんびり読むにもいいかも。


posted by ヤマダマコト at 21:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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