2015年06月16日

勝手にKDP本レビュー12★レイチェル・カーティス 宇宙人に選ばれし少女

久々のKDP本レビューは阿部うさぎさんのレイチェル・カーティス
普段はレズビアン小説を書いている方の作品。阿部うさぎさんが何者かはまったく分からないですが、たまたまAmazonさんのオススメ本の中に見つけたので気になりました。

一家惨殺事件唯一の生き残りの少女レイチェル。
ある日、全世界に向けて謎のメッセージが届く。「我々は地球人ではない。レイチェル・カーティスの身柄引き渡しを要求する」

このあらすじだけで購入決定です。
宇宙人大好物で矢追さんの特番にかじりつき、アメリカのドラマ「V」のに度肝を抜かれた世代としては、これを見逃すわけにはいかないでしょう。
だいたい、昨今の宇宙人は軟弱者が多くてがっかりしてる中で、この骨太なあらすじですよ。

この殺人事件と宇宙人による身柄引き渡しの関係、そして、なぜレイチェルなのか。レイチェルをどうするのか。このワンテーマでぐいぐい引っ張っていくのは初期キング作品を彷彿とさせます。
というか、阿部さんという方は明らかに海外小説の熱心なファンなんですね。言い回しとか視点とかモロ洋物翻訳版の趣き。だから若干読みにくい部分もあるし、視点がフラつくとこもあるけど、逆に海外のペーパーバックっぽくて好きな人にはたまらんと思います。世界観はまさにザ・アメリカ。
この視点については実はオチに繋げるための演出だったりするんですけど、いまひとつ機能していない気がしました。

物語はレイチェルと彼女を取り巻く周囲の人間たちの視点で進むのですが、軸としては「殺人事件の真相とは」「なぜレイチェルなのか?」という2つの謎を軸に進み、中盤からは人類滅亡の可能性が示唆されます。
国連やアメリカ政府の判断、「人類全体のために1人の薄幸の美少女を宇宙人に差し出していいのか」という世論のうねり、宇宙人を神と捉え、レイチェルを差し出すべきと主張する新興宗教団体の暴走などさまざま要素をはらみながら結末へ。

実際、長編といっても短めなんで、ちょい個々のエピソードは物足りないですが、俯瞰的に見るとすごく意図がわかる構成。
ややキャラクターの心理描写に強引さを感じたり演出がそっけない気はしますが、ぐいぐい読ませます。
あとレズビアン小説の書き手だけあって、そっち方面を含むエロ関係も結構あるし、なにより、殺人シーンはかなりエグい。私も嫌いじゃないですが、やっぱり自分の基準というか、ここまではやれない、っていうラインがあるんですが、そこちょっとはみ出してる感じ。
海外小説風のドライな表現と作品全体の若干のぎこちなさが相まって、強烈でした。

ストーリーとしては、割とシンプルながら、ひっくり返って、それもアリかなという内容。
インディーズならではの魅力を満喫しました。
この作品の前半と後半の変化もそうだし、おまけのレズビアン小説の冒頭を読む限り、まだまだ成長段階というか、どんどん文章がこなれてきている気がします。
レズビアン小説は読まないですが、こういう一般エンタメをどんどん書いて欲しいです。こういうテイストは大好物です。



万人向けではないですが、ニーズは絶対にあると思います。
posted by ヤマダマコト at 17:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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