2015年10月23日

勝手にKDP本レビュー★16ヴィランズ〜悪役たちの物語〜

久々にKDP本レビューいってみます。
今回は初瀬明生さんのヴィランズでございます。

何気に初瀬さんの作品は読んでるんですよ。スタンダードなミステリを、すごく誠実というか真面目な作風が印象的です。どれも面白いんですが、いろんな意味で、1番野心的なこの作品がレビューも楽しいだろうな、と思いました。

今回は小説家の女の子の脳内世界が舞台の凝ったスタイルで、劇中ではテーブルトークRPGという比喩でしたが、もっと砕けた言い方をするとテレビのバラエティー「逃走中」ですよね。あれが例えとして分かりやすい。主人公の「魔女」らは逃走中に参加するタレント、作家少女ニーアがゲームマスター、その舞台がベタなRPG風なわけです。
ポイントはヴィランズタウンという収録の休憩中に参加者同士が攻略法をミーティングもストーリーに組み込まれている感じ。
で、主人公一行はそのゲーム内でライバルチームと競いつつ、ゲームマスター的なニーアの仕込んだ謎に挑戦していくわけです。ちゃんとエキストラもいて、彼らも収録外のオフではヴィランズタウンで別に暮らしているという凝った設定。
いわゆる和製ライトファンタジーの典型のような世界ですが、ガチでミステリやってるのが面白いっす。

感心するのは、ニーアの中の各キャラクターが小説用の世界で活躍するという劇中劇中劇みたいな状況でも自然にキャラが動かせているところ。最大の難関をちゃんとパスしてるのは凄いな、と。逃走中みたいにBGMもナレーションもないわけですし。
キャラクターもかなりの数投入してますが、 きっちり書き手の想定通りに動いてるんじゃないでしょうか。
ミステリ部分も隙なくきっちり作られていて、さすがだなと思いました。
多分、このプランをきっちり小説に落とし込めた時点でオッケーなんじゃないでしょうか。
後半はかなり読まされる感じです。オチもいい。

ただ、初瀬さんの性格なんでしょうけど、すごくきっちりしすぎというか、もっと説明とか設定はズボラでも良かったような。とくに序盤。そこまで厳密である必要はないし、読者にもうちょっと甘えていい気がしました。
魔法の設定や造語、様々なルールが飛び交う世界観で本格的なミステリをやろうとすると、嫌でも読者の負担は増すでしょうし。だから情報量を減らしてもいいかも。もっとシンプルなミステリ要素でも作品の魅力は減らないと思うんですよね。
逆に、魔女とか悪魔とかキャラクターの掘り下げはもっとやっても良かったような気がしました。無駄なエピソードを増やしていいと思うんですよね。もっとキャラクターの魅力を伝えるような、例えば、魔女のラッキースケベ要素とか。悪魔がゲイにモテモテとか。大御所さんが痛風とか。些細なものでいいので、もっとエピソードを増やしていいような。
多分、ミステリよりラノベ的にキャラクターを前面に出した方が、この作品は絶対に面白くなると思う。
そもそもミステリ小説の名作って、ミステリ部分以外の面で評価されていることの方が多い気がするんです。実は大事なのはトッピングなんじゃないかと。



でも、他に類のないイカした小説には間違いないので、気になったら読んでほしいです。
posted by ヤマダマコト at 20:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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