2016年02月15日

勝手にKDP本レビュー★24「円盤対猫」折羽ル子

さて、今日は折羽ル子さんの「円盤対猫」
無料キャンペーンで落としたブツでございます。
折羽さんといえば、「そらとぶた」が我が家の長男(まもなく7歳)に大ウケ。その後の図画工作の作品に深刻な影響を与えることになった傑作でしたが、今回は小説。
内容は表題作を含む短編やショートショート連作の詰まったものです。
全体を通して、すげー勢いですわ。周囲を蹴散らしながら爆走する暴走トラックのようなインパクト。とにかく語り口が面白い。落語的な趣きがある。多少読みにくい点もありますが、これが味なんでしょうね。このライブ感こそが真骨頂。

1番気に入ったのは、「終末の王国」。これは何気に凄く好き。
伝染病でみんながゾンビになった人類滅亡前夜、生き残った人々が食料水を巡って殺し合いをする中、あるおっさんが人生の最後を好きなオモチャに囲まれて過ごそうとオモチャ屋さんに向かう物語。
そこには、同じようなことを考えたオタクがたくさんいて、クレイジーな緩い繋がりのユートピアができているという。
まさに3・11のあとに日本人が背負った重い課題に対する1つの答えといえなくもない、気がする。ちょっとだけ。
それまでの人生が地獄でしかなかったダメなおっさんが同好の士と戯れてゆくわけですが、まず、その発想がスゲー。この展開で気にならないわけがない。かなりエグく不条理な展開も、この軽妙な語り口でなんとなく読まされてしまう。そして、中盤以降のダイナミックな展開も粗挽きですがイカす。この展開はなぜか飴村行の「粘膜人間」を思い出しました。
これ、一歩間違えて、饒舌で上品な文章で書き直したら純文学系傑作になりそうだけど、そんなことしたらつまらなくなること必至。サンマは目黒に限るじゃないけど、この作風だからこその魅力じゃないかな、と。改行はもう少し多くてもいいかもですけど。
これだけでも読む価値はあると思う。
短編の場合は、やっぱりインパクトのある舞台とダイナミックな展開が大事なんだと改めて再確認させられました。

あとは表題作の「円盤対猫」。どことなくウルトラセブンとかの円谷系の香りがする本作。勝手に脳内で石坂浩二ナレーションで読んでました。大丈夫、こっちは脳内なんでコメントがカットされるようなことはございません。
まさにタイトルの通りの内容で珍妙な別次元の高度な文明を持つ種族と猫が戦うんですが、これも、宇宙猫はじめとする語りの勢いで押し切る力技が光ります。
猫小説という意味では牛野小雪さんの「真論君家の猫」という王道作品がありますが、ここまでシュールな世界観ながら、たまに共通する部分が感じられたのが印象的でした。



最後に、ケモノノファイトは漫画や絵本ならもっと面白いだろうと思いました。小説だと、それぞれオチの手前にちょっと溜めがあった方がウケる気がしないでもない。
ラベル:Kindle KDP SF
posted by ヤマダマコト at 13:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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