2016年04月08日

勝手にKDP本レビュー★31月狂四郎「名無しの挽歌」

なんだかんだで月狂四郎さんの「名無しの挽歌」読了。面白かった。
月狂さんはとにかく本を量産しまくってるものだから、結構、本自体はいくつか持ってるし、短い作品は読んでるんですよね。でも、長編は初めて。
いわゆる内輪ネタかと思っていたら、しっかり小説として成立しているあたりはさすが。この、少し硬めで軽いステッドラーの4Hみたいな文体がすごくらしいというか。
人間ドラマとして見ると、少しバランス的にはいびつというか、小説ネタと底辺就業ネタが多すぎる気はするけど、あえて、このネタで作家志望の「あるある」狙ってるんだと思うんで、これはこれで正解なのかな。ちょっとオーバーなキツさを書くのが良い感じ。この間のヘリべさんの悪ドラもそうですが「リアル」と言っても、みんな見ている世界が違うんですよね。その辺が面白い。私にとっては未知の世界観でも、それでも立派にリアルなんです。
なんにせよ、ちゃんときれいに〆たなーという印象です。そこはポイント高いっす。



んで、本題。
月狂さんが拙作「テーブルの上のスカイラーク」の早川というキャラと、同作の主人公との共通点に言及してる点について。
まず、「いい年こいて夢を忘れられない大人」というモチーフ自体は、そんなに珍しいものではないと思うんです。純文学だろうがエンタメだろうが、色々料理できる基礎食材みたいなもの。今回のポイントは現代日本を舞台にしてること、冴えないおっさんであることなど、確かにシチュエーションは似てる。家族の描写も本質的には一緒。若干、描写の方向性は違うんですけど。実は月狂さんみたいな直接的な描写の方が本当は良いのかもしれない。
んで、それは、やっぱり同じ物を見ているからなんでしょう。月狂さんは自身の得意なジャンルでそのものずばりど真ん中ストレートに描いたし、私は、「天才に嫉妬する脇役の視点」の切り口で、エンタメの一つの(けれども大きな)ピースとして描いた。その違いはあるけれど、考えていることは一緒だと思います。私も公募で苦労したし、卓球はある瞬間に満足して上に進むのを放棄ましたし。
私は今回、本来はシナリオの脇役であるはずの早川という男に異様に肩入れしてしまったんですが、それは36歳になるオヤジとして、どうしても書くべきだと思ったわけです。だからこそ、あの作品は素のメッセージを面に出してしまった気恥ずかしさもあったりする。
そして、1番興味深いのは、スタートの位置は違えど、結論はさほど変わらず、両作とも夢や目標を最後に「折り合いをつける」ということ。確か月狂さんは「やめてしまうのはもっとカッコ悪い」とおっしゃっていましたが、両作とも「カッコいいギブアップ」の理由を模索したんだろうと。
実は作中の当人たちも「どうもダメそうだ」というのは分かってる。でも、それを認めたら自分が死ぬ。その中で、どうやって自分の気持ちと現実の折り合いをつけるか。見ようによっては両作とも彼らの「長い言い訳」。
夢を託すとか、メッセージを届けるとか、どちらも、一見カッコいいけど、本質的にはそんなにカッコいいものでもない。でも、それが1番良いのだろうと。そういう風にも読めるんじゃないかな、と両作を並べて思いました。


と、まあ、この辺にしときます。こういう文章はやっぱり苦手。
一応、ネタバレは避けたつもりです。
タグ:KDP Kindle 純文学
posted by ヤマダマコト at 22:11| Comment(2) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
レビュー拝見いたしました。ありがとうございます。
純粋にあの「山彦」の作者様に楽しんでもらえたというのが何より嬉しいです。
今回は単純に「わなびあるある」を描くというよりは、夢を追いかける者だけが知る痛みを描きたかった部分があります。それはボクシングでも卓球でも変わらないわけで、このKDPという舞台なら、それは作家志望でしかありえないだろうと。
この作品はある意味自分に対しての言い訳でもあり、(それこそご指摘いただいた通り)自分との折り合いのつけ方でもあるわけですが、それを飛び越えて「ダメでもいいじゃん」という開き直りがあるんですよね(笑)。みんながみんな一生懸命やったら、どう考え経って挫折する人間は出てくるわけです。だから、全力で努力しても自分がそっち側になっちゃったらそれはそれで仕方ないじゃんと思ったのです。その点についてはまたブログでも掘り下げてみようかなと思っております。
筆力のある作家さんに認めていただけたのは今後の励みになります。これからも精進していく所存です。
重ねてレビューのお礼を申し上げます。
Posted by 月狂四郎 at 2016年04月08日 23:35
わざわざコメントありがとうございます。
ただの「わなびあるある」ではないというのはもちろん分かってるんですが、とはいえ濃すぎるんじゃないかと心配してました。ストーリー的にはすごく下地がしっかりしてる分、余計に、この題材では窮屈なんじゃないかと。
なんにせよ、楽しく読ませていただきました。次回作も期待してます。
Posted by ヤマダ at 2016年04月09日 10:06
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