2016年05月20日

勝手にKDPレビュー★34矢樹純「がらくた少女と人喰い煙突」


というわけで、矢樹純さんの「がらくた少女と人喰い煙突」を読了しました。
いやー面白かった。

内容はすごーくざっくり分類すれば孤島を舞台にしたいわゆる密室系ミステリ。吹雪のペンションとかもそうですが、ミステリの定番。
正直言って、このジャンルについては私はあまり好きではないのです。よほど斬新でなければ読む気がないというか、動機や設定やトリックの多少の違いで新味を打ち出すのはやっぱり難しい。とくにセルフパブリッシングの密室系は似通ったものが多い印象がします。
赤井五郎さんの「サマータイムリバース」とかそうしたシチュエーションを逆手に取った快作もありますけれども。

ストーリー的には、ガラクタ収集という変わった性癖を持つ中学生の陶子と、そんな彼女の治療を両親から依頼された、知的だけどどこかイカれた心理カウンセラーの桜木が、瀬戸内海に浮かぶ狗島を訪ねる展開。
狗島は、陶子のおじさんが園長を務めていた愛心園という施設があり、今は園長の娘である仁菜という人が跡を継いでいるんですが、実は愛心園は、戦前から平成に入る頃まで赤痣病患者の隔離収容施設であって、非常に暗い過去を持ってるんです。その島で起こるおぞましい事件を陶子と桜木が解決していくという。
この魅力的なキャラクターと匂うほど重厚な背景にメロメロな感じ。ディテールもしっかりして、細部までよく取材してるなぁ、と思いました。かなりのボリュームですが、まったく長さを感じませんでした。
物語の運びもうまい。小出しにする意表をついた展開に釘付けになりつつ、ふんだんにミスリードが仕込んであって、とにかく最後までぐいぐい引っ張ります。最後のオチもシンプルだけど完璧だと思う。唸らされました。
この陶子と桜木の歪みっぷりがすごくいいんです。とくに陶子のキャラはすごくいい。冒頭の陶子のシーンがキャラ立てには重要だったんだなぁ、と思いました。あれで一気に引き込まれました。
文章もそつがなく、すごく読みやすい。というか、これはちょっとかなわないな、という印象です。登場人物の配分やキャラ付けも考え抜かれていて、今までに相当書いてきたのが分かります。
なんというか、江戸川乱歩とか、そっち系の延長線上にある新作っぽいですね。おどろおどろしい感じとか。往年の角川映画っぽい。

読んで改めて思うのは、こういうジャンルこそキャラクターや設定が大事だな、ということ。とにかくセルフパブリッシングのミステリは密室系率高めですが、やるからには、これくらいしないとキツいんじゃないかと。
逆説的に、これだけ書ける人にかかれば、古典的なジャンルもここまで優れたエンターテイメントに昇華できるということでもあります。



ツッコミどころはまったくなかったんですが、強いて挙げるなら表紙が勿体無いというか、すごくキャッチーなタイトルで、フォントもよく見ると面白いんですが、あんまり目立たない感じが不思議。もっとポップにしたらいいのかしら。これ、絶対にみんな好きになるタイトルなんで、もっと売れてほしいです。
ラベル:ミステリ Kindle KDP
posted by ヤマダマコト at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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