2016年06月28日

勝手にKDPレビュー★35王木亡一朗「夏の魔物 Out of Standard 」

というわけで、久しぶりのKDP本レビューは、以前に課題図書に挙げていた王木亡一朗さんの「夏の魔物 Out of Standard」。昨年の晩夏にリリースした割れたスイカと個性的なフォントの表紙が印象的な短編集。

王木さんは同郷の出身というか、同じ小学校の後輩というちょっと縁がある方で、私自身は面識はなさそうですが、実は妹や従姉妹あたりは世話になってるんじゃ、というかそんな感じだったりするんです。で、もう一つの縁というのが「夏の魔物」。
私が初めて出したKDP本「団地のナナコさん」がスピッツの初期シングル曲「夏の魔物」をモチーフにしたファンタジーだったんですが、まさか、そのものずばりのタイトルで来るとは。王木さんも、同じ曲からインスピレーションを受けたそう。
ちなみにスピッツの曲は私が中一のころのリリースで、スーファミ全盛期。スピッツがロビンソンでブレイクする何年か前で、すごくマニアックだった時期なので、どう考えも王木さんがリアルタイムで聴くことはなかっただろうな、と。深夜のラジオとか聴く年じゃないですしね。どこかで、小島麻由美さんのカバーの方をあげていたので、そっちのイメージなのかも。たしかに表題作は、女性的な雰囲気で、そっちに寄っている気がする。スピッツの方は未分化な性衝動と攻撃性とノスタルジーが入り混じった倒錯したジュブナイルのイメージがより強い感じですし。

そんな意味でも、私がこの作品を読むのは必然的というか、早い段階で買ってたんですが、読む時間がなかったんですね。で、夏だし、ってことで。

5作収録してあるんですが、比較的スタティックなものが多い感じです。印象に残った作品を挙げると、まずは「ライトセーバー」。ポイントは二人称の使い方。私も昨年末に二人称小説を書いたんですが、その前に読んでおけば良かったな、と後悔してます。この作品については終盤が気持ち良かった。「キミ」の心理をもう少し上手いこと表現できれば、もっとラストのカタルシスを高められることができたかもなーと思わなくもないですけど。なんちゅうか、王木さんの人間的な魅力というか、いい人なんだな、っていう部分がすごくうかがえる感じがします。
あとストーリー的な完成度では「サイクロプス」が圧倒的だと思うんですが、個人的に好きなのは、「ヘレン!ゲッタウェイ・フロム・ミー、ユー・ビッチ!」。ヘレンというと西川師匠のアレですが、とにかくヘレンと主人公の関係、ヘレンの描写が抜群に上手い。すごく緊張感とリアリティがあって、唐突に終わるラストの無常感もすごくいい。このあたりは、それこそ「夏の魔物」を書いたころの草野マサムネ的な感じがする。この美しさと居心地の悪さ、卑屈さが入り混じった感じがたまらない。これ、よく考えてあるなと思うし、私がいろんな作品で挑戦してなかなか上手く表現できない部分だったりするんで、ちょっと羨ましい。
表題作の「夏の魔物」は、経過や展開にサプライズはないですが、小道具としての花束の使い方がいい感じでした。あのあたりが王木さんのセンスというか。



あれっすね。これからの時期、大学生がお盆の帰省中の電車で読むとちょうどいい感じだと思います。
posted by ヤマダマコト at 10:49| Comment(1) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。

先日、『山彦』の統合版を読ませていただきました。
あまりの面白さに一気読みしました。

僭越ながら、わたしのブログでご紹介をさせていただきましたので、一報まで……

また、誠に勝手ながら、
ブログもリンクを貼らせていただきましたので、
この件もご容赦ください。

海河童
Posted by 海河童 at 2016年07月08日 10:37
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