2016年09月13日

勝手にKDP本レビュー★37野村龍成「プフトゥカワの花」

久々のKDP本レビュー、野村龍成さんの「プフトゥカワの花」です。
とりあえず、私に純文学中編のレビューさせるのは無謀の極みなんですけどね。たまたま積んでた本を何冊か読んだ中で面白かったので。ロクに下調べもせずに読んだので至らない部分もあるかと思いますが、文学青年でもなんでもないカップ焼きそばマニアの拙い感想ということでひとつ。

バブル崩壊直後で実感がない91年のニュージーランドが舞台。現地の大学に通うA子こと瑛子の視点で進むストーリー。
A子に加え、B子こと薫のニュージーランドでの暮らしと日本時代の回想録で構成されていて、A子がなぜA子なのか、B子がなぜB子なのかを明らかにしつつ、2人の微妙な距離感を描き、さらにB子に日本から電話をくれる友人Cちゃんの存在が出てくる、的な感じ。
全編を通して、穏やかにエロスとデス(あるいはロスト)をキーワードに、それぞれが日本で経験した特異な人生と、そこからニュージーランドにたどり着くまで、とその後を端正な文章で描いています。

純文学らしいなーと思ったのは、やっぱりA子、B子という表記。すごく分かりやすいし、同時に名前から生まれる先入観を良い具合に消してくれているんですよね。その表記に至る経緯もうまく作中でエピソードに落とし込まれていて、良いアイデアだと思いました。
あとはやっぱりキャラクターが良かった。最初はB子作り過ぎじゃね?とか思いましたが、読み進めるうちに自然と情景が浮かぶし、A子の過去のエピソードもいい感じ。
この、色のないバブル崩壊直後の日本での過去と、その日本から離れた色鮮やかなニュージーランドとのコントラストがすごく素敵。そして、2人の記憶とニュージーランドでの今を繋ぐところにCちゃんが入り込んでくるという。A子とB子の関係性、それにA子の回想での人間関係と照らし合わせながらCちゃんの居場所を考えると面白い。唐突なラストもすごく「らしい」感じがしました。
あと、何か大きなトラブルを起こしそうなB子にやきもきしたり、知らないうちに感情移入できてたのに自分自身驚いています。

個人的に気になったのは、A子の回想の時系列でいけば、最後になる封書のあと。あそこからニュージーランドへ渡航するわけですが、その理由は冒頭の「違う空の下で暮らすため」、「違う世界で生きてみたい」に繋がるんだと思います。ただ、その過程をもうちょっと知りたかった。叔父はどういうリアクションだったのか、とか、そこに至るまでのA子の心情や人間関係の変化とか。すんなりいくとは思えなかった。
もちろん、普通に想像はできるし、野村さん的に「それを語るのは野暮だろ」という感じなのかもしれませんが、もうちょっとA子の心に触れたかったかなーと思いました。
そして、タイトルにも出てくるプフトゥカワの花。これが季節が逆の南半球を彩るピースなんです。私は以前にふしぎ発見かウルルン滞在記で、この花を見た記憶がありますが、色鮮やかな異国の花なのに、花の形がどこかヒガンバナに似ているな、と思った記憶があります。なんとなく、そのあたりもエロティックで同時に死の匂いが漂ってくる気がするのです。



と、まあ、たまには真面目に本を読んでみました。
興味のある人は是非。
posted by ヤマダマコト at 19:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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