2016年12月07日

勝手にKDP本レビュー★41晴海まどか「ギソウクラブ」

カップ焼きそばフィーバーの中、ひっそりと晴海さんの「ギソウクラブ」を読了しました。独立作家同盟さんとこの群雛でいくつか読んでたんですが、全部読むとかなり印象が違いました。
タイトルからして学校で血がドバッと出るミステリなんじゃないかと思い、しかも、私が読んだ号はそうでもなくて、「ミステリーパートがない回だったのかなー」とか思ってたし、今回、単行本化したものを買った時も、表紙から濃厚なミステリの香りがしたんですが、そんなことなかった。
本の説明も群雛のインタビューも読まずに、勢いで購入したのがアレなわけですが。

晴海さんといえば、以前も書いたかもしれませんが、「職業軍人的に突き詰めたメソッド」の印象を半端なく感じるんですよね。セルパブを総合格闘技に例えると、みんなが己の信じる競技で鍛錬して技を磨く中で、ひたすら効率よく殺し方を追求していくような方向性。分かりやすく言うとプロの仕事というか。
膨大な執筆量を元にリーダビリティを突き詰めた文章は、やっぱり、ちょっとレベルが違う。簡単に書いてるようで、合理的ですごく計算されているし。

本作は連載モノということで、一人称でそれぞれ視点人物の違う連続短編の形で進むわけですが、このタイプで重要なキャラクターの書き分けとか、各ストーリー単体での筋運び、そして全体を通じてのコーディネートが勝負の分かれ目になるんですが、もう本当に抜かりない。

そんなとこを踏まえての感想となります。
ストーリーとしては、千葉県のごく普通の公立高校のギソウクラブこと技術創造クラブなる怪しげな文化部の面々の物語。これ、部員みんなどこかギソウしているんですよ。
んで、ストーリーとしてはクラブとして文化祭の出し物が決まらない中で、色恋沙汰を中心に色々起きていく。本当にそれだけのシンプルな内容なんですが、かなり極端なキャラクターの味付けと要所に仕込んだサプライズのおかげで、先が気になっていくんです。
あと、晴海さんといえば、長編とかだと、終盤に大きなサプライズを大量に仕込んでストーリーを加速させつつ盛り上げていく作品が多いですが、今回はフラットに進んだのが印象的でした。構成上の理由だと思いますけど。

個人的には第3話の双子のカナちゃんの話が好きで、これだけでも長編一本かけそうなネタだなあ、と思いました。双子の設定、そしてオチも素敵過ぎる。他が若々しくて高校生っぽい中で、ここだけ綺麗にまとまり過ぎてる気もしないでもないけど。でも、やっぱりここが一番好きかな。部室の片隅にこんな感じの双子いそうだし。どっちかというと大学のサークル的な。
本当に全編通して、おっさんには眩しすぎるストーリーでありました。

あと、結構、アニメやラノベのようなキャラクターなんですが、晴海さんらしいシンプルで落ち着いた文体と、絶妙な一人称で、普通の青春モノになってるのが面白いです。
あとがきに、「ラノベっぽいモチーフをラノベっぽくない文体で」と狙いが書いてあるんですが、ちょうど私も同じようなテーマにチャレンジしたばかりなので、余計にその難しさがわかります。クオリティはもちろん、しかも連続短編でそれをやるんですもん。



個人的には、この後の続きが気になりました。続編ってないんですかね。
それにしても千葉県っすか。
ラベル:恋愛 KDP 書評 青春
posted by ヤマダマコト at 13:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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