2017年06月25日

勝手にKDP本レビュー★49守下尚暉「カドルステイト物語第一部 盗賊の掟」

久しぶりのKDP 本レビューです。次で50本目か。

というわけで、守下さんのカドルステイト物語第1部「盗賊の掟」を読了。
短刀直入に言えば、「これはいい」。
とにかく面白かった。
タイトルや表紙見ればわかるようにファンタジー小説。しかも王道の中世風和製ファンタジー。いわゆる剣と魔法の世界でございます。
我々の世代は、それこそドラクエあたりでこういう世界に触れ、馴染んできたわけですよ。だからこそ、この手の小説も結構読んでるわけです。特に「なろう」とかケータイ小説とかアマチュア作家が書きたがるテーマなのか、そっち方面ではうんざりするほど読んでいる。公募系の雑誌で若桜木さんだかが「中世風ファンタジーと巨大ロボは書くな」って言うくらい。
だから、最初はあんまり興味がなかったんですよ。KDPでも、この手の作品って結構あるし優れたものも多い。例えば、淡波さんの「孤独の王」とかね。
今更感もあったんですが、シリーズで出していること、気合の入った表紙や守下さんの熱いツイートに引きずられて読んでみようかと思ったわけです。

物語の舞台はいくつかの国家がひしめき合う大陸で、辺境の村、リーフから都市国家リートに出稼ぎに来ていた若者、デインとカータが成り行きから国家間の陰謀に巻き込まれていくお話。
作中のキャラクター紹介のイラストや、街道で各都市が結ばれたマップがすごく良い感じ。ていうか、ここら辺で、往年の名作「ロードス島戦記」を思い出す30代以上がわんさかいそう。
実際、守下さんその辺りの世代のようで「分かってるね!」感がほとばしってます。
三銃士のダルタニャンとかSWのルーク・スカイウォーカーとか、辺境の青年がどんどん立身出世する物語って、それだけで面白いじゃないですか。ロードス島戦記もしかりで、田舎の血気盛んな若者パーンが自由騎士になるわけですが、このカドルステイトにも、そういう気配が感じられます。そういえば、神視点の文章も、どことなく水野良っぽい。
デインが若きエリート女騎士、リフレアと出会う流れとか今後に期待が持てるし、その物語を大陸の国家群の動向などを丁寧に描いたすごく重厚な世界観で展開していて、おそらくKDPのファンタジー小説の最高峰ではないかと。
表紙もすごくリッチだし、そりゃカテゴリーランキングを席巻するのも納得。
同時に、こういう作品が売れるのは、すごくKDPらしいというか、良いことだと思います。だって、このクオリティでも、この作品は新人賞では一次は通らない可能性が高いと思うんです。出来不出来じゃなくてマーケティングの問題で。それに、ほかの小説サイトでも埋もれていた可能性があるわけで。
そういう意味で、この作品がKDPでリリースされたことはとても幸運で、kindleストアユーザーの懐の深さもうかがえるし、さらに、こうした作品を求めていたユーザーの多さに驚かされます。
この第一部は、あくまで壮大な物語の序章に過ぎないわけですが、それでも、この作品世界を堪能するには十分な読み応え。終盤の戦闘なんかは、かなり迫力もありましたし、それぞれの街並み、そこに住む人々の息遣いもうまく表現できてるし。
ただ、長い物語の助走なので止むを得ないかもしれませんが、若干、序盤の盗賊団の訓練のくだりで間延びした感があります。盗賊団との絡みは、訓練とは別に他のエピソードが多くても面白かったかも。



あと、個人的にはもっと貴族や騎士、ジジイとか大仰な、芝居がかった言動の方が好みかもしれませんが、若い子にはこっちの方がいいのかなーとか。リフレアの超速デレっぷりも、今風な感じがしました。
posted by ヤマダマコト at 16:20| Comment(2) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
拙作をお読み頂き、誠にありがとうございます。
KDPで多くの作品をコンスタントに発表してご活躍されているヤマダさんに、私の作品を読んで貰うというだけでも光栄なことなのに、こうしてブログにレビューまで書いて頂き、本当に恐縮の限りです。どんなに言葉を並べても足りないほど、ただたゞ感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございます。

レビューでは身に余る程のお褒めの言葉を頂き、大変嬉しく思うと同時に、ご指摘いただきました箇所に関しても非常に的確で、おっしゃる通りだと思いました。たいへん勉強になります。

今は少しSNS漬けの生活から離れようと自戒していて、ツイッターを自粛し創作活動に打ち込んでいますが、現在執筆中の一般向け短編作品を書き終えたら、また(程々に)再開しようと思っています。ただ、出来栄えの方は正直イマイチで、読み返してみるとあまり面白くないので、いま執筆中の作品は書き切るつもりではあるものの、発表せずお蔵入りにしてしまうかもしれません。

ヤマダマコトさんの本も何作か拝読させて貰ってます。風情あふれる長閑な田舎の景色の中から、吹き抜ける風や草木の香りまで漂ってくる感じがして、月並ですがとても素晴らしい描写力だなと思いました。そんな中で起こる様々な出来事が非常にリアルに感じられて、その後の展開に目が離せなくなってしまいます。私などがレビュー紛いのコメントをするのもおこがましいと思うので、感想はこのへんにしておきますが、そんな素晴らしい作品を書かれているヤマダさんから、身に余るレビューを頂けたこと、大変光栄に思うと共に、重ねて感謝申し上げます。ありがとうございました。
Posted by 守下 尚暉 at 2017年06月26日 09:50
わざわざどうもです。感想については、個人的な意見なんで軽く読んでもらった方がありがたいです。
カドルステイト物語はパッケージとして本当に丁寧に作られていて凄いっす。そこは見習わないといけないな、と。
次回作も楽しみにしています。
Posted by ヤマダ at 2017年06月26日 10:32
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