2017年12月29日

勝手にKDP本レビュー★53「ひかれあう巨像」未衣子

ことし最後のKDP本レビューは、未衣子さんの「ひかれあう巨像」。パッケージとしては、中編の表題作に加えて、筆者の撮影したと思しき巨像の写真集が付くという、まさに巨像愛溢れる作品。
ちなみに、仏像や大仏ではなくて巨像なんですよ。そこ大事。巨大観音像というヤツです。日本各地で何かの供養や観光名所、あるいは新興宗教のシンボル的に建てられたアレ。大仏ではありますが、ある意味で牛久のアイツもこっちのカテゴリーに入れていいのかもしれない。私はマニアではないので分かりませんが。
多分なんですけど、作者の未衣子さんは、この巨像の俗っぽさや下心の向こう側に人間臭さというか、信仰とは違った市井を生きる人の思いのようなものを垣間見たのかもしれない。そう考えるとすごくわかる気がする。
文学フリマとかが主戦場の方のようで、他にも面白そうなものを書いているようで興味深いです。
ストーリーは、背丈50メートルという規格外の観音像2体が向かい合う家に住む中学生・サラを中心に進むゆったりとしたもの。高校受験を控えた少女の心の機微を丁寧にとらえ、観音像がきっかけで出会った友人によって一変するサラの見る風景が瑞々しく描かれていて面白いです。サラの唯一の肉親である祖母がすごく良いキャラクターでとても印象的でした。
どうみても法律や条例に引っかかるんじゃ、という巨大観音像のある家というぶっ飛んだ設定をごく自然に描き切り、その設定を最大限に生かした人物や舞台を用意し、最後は、向かい合う観音像をうまくテーマに落とし込んで着地させるのは見事でございました。イイ。
最初は文章のリズム合わなくて入り込みにくい感じがしたんですけど、どんどん引き込まれていった感じ。端正で透明感のある語り口もすごくレベルが高くて、ことし1年の締めくくりにぴったりでした。受験生のいるお宅にも是非、っていう感じ。
というか、最初は表紙などから漂う独特の雰囲気もあって、一般ピープル門前払いのディープな世界かと思いきや、決してそんなことはなく、非常に出来の良い小説で安心しました。



写真も面白い。行ったことのあるのは2つしかなかったですが、この見上げる感じが素敵。
posted by ヤマダマコト at 17:41| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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