2018年08月21日

勝手にKDP本レビュー★59初瀬明生「クロージャーワールド〜山形県と仙山線しかない世界〜」

すげー久しぶりのKDP本レビュー。4ヶ月ぶり?
たくさん読んだんだけど、レビュー書く気力がなかったというか、ようやく少し本業も余裕が出てきたんですよね。んで、今後、いくつかピックアップしていこうかと。



まずは初瀬明生さんの「クロージャーワールド〜山形県と仙山線しかない世界〜」。
タイトル通りに壁に覆われた「山形しかない世界」が物語の核となるファンタジー要素のあるミステリ。かなりのボリュームでした。
「壁」が見える主人公の部屋に、兄を探しに来たヒロインが訪ねてくる導入から始まって「夢の書」という主軸の中に「現の書」というカットバックが入り込んでくる第1部では、それぞれの人物や地名が微妙にリンクしながら、パートの最後にはショッキングな事実が明らかになり、そこからストーリーが動き出すという展開。
ローカル色を出しつつ、シュールな設定をきちんと生かして、最終的には一本のミステリにきっちり仕上げ切っていて面白かった。とくに仙山線のくだりとか上手い。ネタバレなんで詳しくは言えないけれど。普通にミステリ部分だけでも一本のストーリーとして完成されている感じがする。
ていうか初瀬さんの代表作である「ヴィランズ」より私はこっちの方がよくできていると思う。以前にあの作品について、「凝ったファンタジー世界とオーソドックスなミステリ、さらにその先のギミックの組み合わせが複雑過ぎる」と指摘した記憶があるんです。おかげで純粋にストーリーを追いかけるのがしんどかったと。
今回も同じような組み合わせだったんですが、かなりバランスを意識している気がする。おかげで、情報に振り回されることなく、しっかりエンタメとして楽しめました。
とくに3部からは心理描写もしっかりしてて上手く盛り上がったなーと。伏線の回収もきれいでした。

あと、個人的には冒頭の「夢の書1」と「夢の書2」は繋げてコンパクトにした方が良かった気がする。全体としては些細な部分なんだけど、1で「壁」が示されて終わり、だとちょっと引き込みが甘いし、これだけだと読者に「こういうお話なのね」という安心感が持たせられない感じがするんですよ。だったら、女の子が押しかけてくるところまで一気にやってしまった方が物語に勢いがつくと思う。
「ボーイミーツガールなのだ」って示しておけば、そこから場面が変わっても読者は混乱せずに読み進められると思うんですよ。
主人公サイドのストーリーが細切れのまま「現の書」が挟まってしまうと、軽めで読みやすい文章なのに冒頭で引っかかってしまうというか。そこだけもったいなかった。それ以外は本当に良くできているだけに尚更。
posted by ヤマダマコト at 21:48| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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