2015年01月09日

原作ファンが分析する映画「寄生獣」

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映画の寄生獣を遅ればせながら観てきたのでレビューでも書いておこうかなと思います。
個人的に思い入れのある原作なので書かずにはいられない。
ただ、1回で書くのは難しいので、後日、
映画完結編の上映前後に原作やアニメとの比較などを絡めて、
複数回で総括したいので、今回はファーストインプレッション的なレビューとなります。

結論から言わせてもらえば国産エンタメ映画としては及第点。寄生獣の映画化としては微妙。
そんな感じです。

はじめに原作ファンからは否定的なテーマについて。
原作の寄生獣というのは、人間とは価値観の違う、しかし知性のある生命体が
人間社会で暮らしていく過程を軸に、
人間と多種生命の関わりや人間とは、というテーマを表現した作品です。
一方、今回の映画は思い切ってテーマを絞り「母性」を前面に押し出しました。
この母性は原作でも重要なキーワードではありましたが、
それは利己的遺伝子などと絡め、決して奇跡的なものではなく、
あくまで寄生生物パラサイトが感情や非合理性を獲得したことのアイコンに過ぎなかった。
それをテーマにしたために批判があったものと思われます。
私自身は、やはり安っぽい手垢のついたテーマだと思わなくもないですが
やむを得ないものだとも思うし、判断としては間違っていないと思います。

だって、2時間2本の尺しかないんだから、そうするしかないべ。
映画としてはしゃーないですよ。
今回はSF的な面白みや、そこに起因した新一とミギーの緊張感のある共生関係、
子どもが父を守る逆転的な面白さは切り捨てるしかなかった。
設定もそう。パラサイトが個性や感情を獲得していく物語を捨てて
はじめからある程度の個性と感情、非合理性を与えたのも、
物語をシンプルに分かりやすくするため。
あくまで軽めのバイオレンスアクションに仕上げたわけです。
個人的には悪くない。なぜなら、そもそも寄生獣はブッチギリで面白いエンタメ作品であって
テーマもその面白さに花を添える要素に過ぎないと思っているからです。
これだけ面白さの要素を削っても、映画寄生獣はエンタメとして成立する、そういう判断で舵を切ったのだと思います。
実際、人間に寄生する変な生き物のホラーアクションとして残った要素だけでも、それなりに面白く仕上がっているわけですし。原作者の岩明氏も、あくまで寄生獣はエンタメであるというスタイルは固持していますし、その判断は妥当であったと思います。

次に映画としての評価ですが、物議を醸しているミギーについては後日語るとして、
思った以上に原作を平均的にシュリンクした印象です。
原作ファンでも、うまくまとめたという評価があることは理解できます。
ただ、個人的には詰め込み過ぎで淡々と進み過ぎた印象。
とくに島田戦と母親戦をひっくり返したのがまずかったように思います。
新一の心身の変化を丹念に描いていくべきところを
台詞で済ませようとして軽くなってしまっている。おかげでイヌの肉がすごく唐突になってしまった印象でした。
テーマの母性に沿った改変ですが、だったらもっと改変して島田を削るとか
新一の変化を感じさせるエピソードを追加するとかやりようはあったはず。
あとは、Aの改変は上手いですが前後のつながりが苦しかったかな。
もう少し登場人物を減らして、もっと掘り下げられたように思います。
原作に縛られずに映画としての面白さを追求して欲しかった。
はなから負け戦なわけですし。
だって、「るろうに」の映画化とは難易度が違うじゃん。
あっちはジャンプのバトルものだし。
寄生獣は削るにしても変えるにしても無駄が少ないから大変。

逆に良かったのはキャスト全般。とくに村野はいい感じでリアルにいそう。
それに美術部の設定と絵の演出は素晴らしいです。VFXも上々。アクションはまずまず許容範囲内。
総じて観られるレベルの映画になってます。
ていうか、ファンとしては実写とCGでこのレベルの寄生獣が観られるだけでも嬉しいし
注目してもらえているだけでも感謝です。
とりあえず、未見の原作ファンに対しては

デビルマンにはなってないから安心して

と強く言いたい。



原作未読の方は是非こちらを。私も買いたいですわ。


ラベル:寄生獣 映画
posted by ヤマダマコト at 11:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする