2020年03月19日

ヤマダ氏、小説版「鉄人兵団」を読む

この本、たしか映画のリメイク版に合わせて出版されたと記憶しているんですよ。その時、近くの本屋で見かけて少し目を通して、結局買わなかったんですよね。理由は覚えていないけど。ただ、パラサイト・イヴの瀬名秀明が私の好きな劇場版ドラえもんをノベライズするということですごく興味深いし、いつかちゃんと読もうと思いつつ忘れていたんですよ。
そうしたら、拙作「勇魚神」のレコメンドに出てきて思わずKindle版を購入。よく考えれば、勇魚神はオリジナルの鉄人兵団の影響も少なからずあるわけだから、ちゃんとこちらが読んで欲しいジュブナイル好きに届いたということだろうし、読むきっかけができたのも嬉しかった。



というわけで感想ですが、実は瀬名さんの作品ってデビュー作のパラサイト・イヴの印象が強すぎて、わりと荒っぽいイメージがあったんですよ。で、久しぶりに読んだら随分こなれていて驚きました。あくまで小学校の高学年でも読めるようにしたのかもですが、すごく読みやすい。

内容は映画やコミックに概ね忠実で映画のリメイクよりもオリジナル寄りなんですが、こう小説ならではの良さがすごく出ているな、と。なんとなく「瀬名秀明のドラえもん」といえば、面倒くさいSF解釈がずらずら出てくるのかと思いきや、「SF作家」より「藤子不二雄ファン」の要素が勝って、良い塩梅に仕上がった印象です。
荒唐無稽な児童漫画を精緻な文章でしっかり再構築し、ちゃんと内面も描写したおかげで本格的なジュブナイル小説になっているのもすごい。とくに劇中では一瞬だった「一夜」の部分を丹念に描いて少年少女の内面を掘り下げるあたりは「分かってるね!」と思う。スネ夫の丁寧な描写もいい。土台がしっかりしているからリアリティがある。本当に好きなんでしょうね、ドラえもん。
一方でひみつ道具や四次元ポケットのSF解釈は「らしい」感じ。とくに、巨大ロボ「ザンダクロス」の人工知能にナノマシンによる自己修復機能は今風なだけじゃなくて、物語後半に良い意味で緊張感を与える仕掛けになっていて良かった。
あと、藤子不二雄他作品から来た2人についてはなかなか興味深い起用法だと思った。決して必要不可欠ではないけれど、単なるファンサービスだけ、というわけでもなくて、彼女らはリアルタイムでオリジナルを楽しんだ今の大人たちの代弁者というか、そういう存在なんだろう、と。
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2020年03月11日

水谷広「セーブ→ロード→」が面白かった

久しぶりの読書感想文。なんつーかKDP本ですね。水谷広さんの「セーブ→ロード→」。



いじめられっ子の中学生がひょんなことから見つけたPCゲームが、自分の人生をRPG的にセーブ&ロードできちゃうという優れもの。そいつをタイムリープ的に駆使していく中で、とある少女に出会って、みたいな物語。
いわゆる「世にも不思議なアメージングストーリー」的な不条理系のモダンホラーっぽいんですが、すごく良くできていて面白かった。この作者さんはプロフィール見るに短編やSSの方が得意そうで、実際に文章の軽さやアイデアは短編向けなのかな、と思うんですが、喧嘩のシーンの繰り返しとか「間」や「余韻」もしっかりとれていて良かったです。
KDPも探せばまだまだ面白い人がいるなあ、と思いました。短編の「死にたいママと死にたいあたし」も良かった。なんていうか、初期の日本ホラー小説大賞受賞作っぽい味わいがあるんですよね。
こういう繰り返す系のネタって、どうしても単調になりがちなんですが、ちゃんと物語に動きを持たせられているので飽きることもなくて、よく考えてるんですよ、すごく。

でも、セーブ&ロードが起きたタイミングをセーブデータと共にもっと分かりやすくした方がスリリングになりそうな気がした。特に終盤の絶体絶命なところ。
あと、これは私の好みですが、最初のロードの瞬間とかもっと心理描写が濃い方が良かったかなあ、とも思いました。
完全に私の趣味ですけど。
というわけで、興味のある方は是非是非。
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2020年02月26日

このセルパブ2020出たってよ

まずは1日に開催予定だった阿賀北ノベルジャム発表会が新型肺炎のおかげで延期。マジか。

そんなこんなで、本題に入ります。このおっパブ、じゃなかった「このセルパブ」こと「このセルフパブリッシングがすごい!」2020年版が遂にリリースとなりました。



率直な感想としては、今回はとにかく多彩ですごく良かった。ランキングも作品も参加者もそうですが、今までで1番オープンな気がする。
話題の人もいれば人気作もあって、現在のセルパブ市場では無視できない規模で盛り上がるBL勢もちゃんと入っているし。
実際に「このセルフパブリッシング」と銘打って全網羅を謳うなら、もっとBLの人が参加しても良いと思うんだけど、今回はこれでも凄いと思う。藤崎編集長ご苦労様でした。

インタビューも今回は個性的なメンツで面白い。ヘリベさん、ていうか今は杜さんか。相変わらずだなあ、と思うし、すごくインタビューは面白い。藤崎さんの寿命とトレードオフな感じもするし、最近、セルパブ入った人にとっては「なんやねんコイツ」かもだけど、小説は凄いものを書く人なんで、興味があったら是非是非。
一方のバーチャル美少女ねむさんのインタビューも面白い。まさに異文化衝突的な感じ。こういう人にはどんどんセルパブを盛り上げて欲しいです。ネットコンテンツに対する取り組み方は見習うべきところがすごく多いと思います。
あと糸魚川さんは安心の進行で過去3回の流れを汲む感じでほっとしますし人柄が窺えて良かったです。今度、作品を読んでみようと思いました。

で、この企画そのものについては次回もやるそうですが、個人的にはようやく形になってきたと思うんですよ。今回、異文化が混じり合って本来あるべき姿になってきた感じがします。だから、もっと続けて欲しい反面、このまま続かないんだろうな、という気もする。
セルパブ自体がどんどん拡大しているし、人気作家が増えてくれば商業に対する「セルパブ」というカテゴリー分けが、少なくともストア利用者にとっては無意味になってくると思うんです。
そうなったときにどうするか。個人的には逆に規模を縮小して究極の内輪企画にしても良いと思ったりもするし、ジャンルで細分化したり、本ではなく作者にクローズアップしても良いと思う。
ただ、ベストなのは、その時が来たら藤崎さんがあっさり見切りをつけて終了することなのかもしれない。
なんていうか、藤崎さんには作家であって欲しいという気持ちがすごくあるんですよ。こんなことしてる場合じゃないだろ、というか作品で盛り上げる側に回って欲しい気がする。

まあ、そんな感じです。
そうそう、私の方は金曜日夕方から勇魚神第3部の無料キャンペーンをやるんでシクヨロです。いや、ここに自作のアフィリエイトリンク貼るような野暮なことはしないですけどね。
posted by ヤマダマコト at 22:57| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする