2019年01月25日

このセルパブ2019出たってよ

そういえば、「このおっパブ」じゃなかった、「このセルパブ」こと「このセルフパブリッシングがすごい!」の2019年度版がリリースされた模様です。
恒例の投票形式のランキングやら寄稿で、それぞれがおすすめのセルパブ本を披露しあうガイドブック的なものです。
今回、私は少し距離を置いたんですが、それでもちらほら取り上げてくれる人がいて嬉しい限りです。謝謝!
割とセルパブ周辺では様々な企画が現れては消える中で、なんだかんだで3回目ですしスゲーなと。編集長お疲れ様でした。

ちなみに私の投票はあんな感じです。「どうせヤマダはブログでレビューしたものに投票するんでしょ」と言ってる方がいると耳にしたので、しばらくレビュー自粛して手の内を隠してみました。なんとなく。なんというか投票に影響与えたくなかったこともあります。
投票作も気が向いたらレビューするかもですけどね。特に私以外チェックしていなさそうな作品とか。
今回は、とくに夏以降に面白い本が増えてきたから、本当に選ぶの苦労しました。ちなみに次点だと「病まない病」、「ひつじと黄色い消しゴム」あたり。逆に私の好きなエンタメ長編は点数的には以外と出てこなかったのが残念。

あと、コラムの方も、まあ最後かもと聞いてたし、平成も終わるし。ああいう感じで。
黎明期の作品を読んでない方が増えてきた気がするし。その辺の魅力もアピールしたかったんです。

だいたい目を通したんですが、ランキングを含めて、今までよりエンタメ色が薄めというか文芸部的な雰囲気が強くなった印象があります。そもそも私の投票もそんな感じだったし、今年はそういう年だったんだろうなと。これはこれで感慨深いです。こう世代交代的なものを感じてみたり。あとはセールスに反映されていけば良いなあと思います。やっぱり多様性は重要だと思うんですよ。確かにKDPはじめセルパブは、いわゆる「なろう」や「カクヨム」より懐が深くて、みんな好き勝手なジャンルを攻めてるのが最大の魅力だと思うんですが、それでもSFやラノベ、純文学の3つに偏りがちなのは否定できないと思うんです。そういう意味で、今回は不条理系やら青春ものやらラブストーリーにコメディとバラエティに富んでいて面白かった。良くも悪くも「綺麗なランキング」だなと。



とりあえず無料だそうなので興味のある方は是非。
ラベル:セルパブ Amazon
posted by ヤマダマコト at 12:21| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月15日

出たぞなもしMashUp! セルパブミックステープvol.1

というわけで、出ました噂のリミックス本「MashUp! セルパブミックステープvol.1」。概要はすでに説明した通り、隙間社の2人と王木亡一朗さん、それと私によるそれぞれの作品をリミックスした本になります。
無料キャンペーンも始まったことですし、ここら辺で個々の作品について個人的な感想でもちらっと。
紹介は掲載順。
なお、無料キャンペーンは17日夕方までの模様。



「サイクロプス(Siva mix) 」 弐杏
王木さんの「サイクロプス」のリミックス。その手法がユニークというか、オリジナルの裏面を描いていくんですね。別の切り口から例のハイテンションで物語を追体験しつつ、ちゃんと綺麗に落とす感じ。なんつーか弐杏節が効いてますね。読後感も含めて今回の作品の中で最も健全な感じがする。

「ナイトクルージング 」 王木亡一朗
拙作「魚(いよ)」のリミックス。オリジナルが民話的スピリチュアル風味だったんですが、こちらは打って変わって地に足の着いたダークなファンタジーにリビルド。舞台もオリジナルと重なりますが、描写や演出でこちらの方が雰囲気がよく伝わる気がする。阿賀野川河口付近の大河感みたいなところ。なんだか映像作品っぽいなと。

「ハイランダー、荒野を往く」 ヤマダマコト
王木さんの「ライトセーバー」をリミックス。印象的な二人称のストーリー展開を踏襲し、 なるべくオリジナルに準拠させつつ、最後は大きく違う感じ。オリジナルの鏡写しみたいな、まあアレな感じです。ちょっと書いてから不安になった部分もあります。王木ファンに怒られそうで。

「SIDE-B」伊藤なむあひ
拙作「変人たちのクリスマス」のリミックス。これは私もオリジナルを忘れてたという。大まかなストーリーはそりゃ覚えてたけど、ディテールは適当だったので記憶になかった。だから「文学少女ケイコ」ネタは懐かしいし、まさかそこを軸にしたリミックスが出てくるとは思わなかったし、しっかり作り込まれていてすげえな、と。

「スター・ストーリーズ」ヤマダマコト
なむあひ作品「鏡子ちゃんに、美しい世界」のリミックス。コンセプトが面白いので、やっぱりだいたい原作踏襲で最後にひねる感じ。なむあひ作品全体に漂う「死の匂い」を大事にしようと。クライマックスに使った物語もそこから着想。あれしかないと思った。モチーフの「星」はもう一つのリミックス候補だった作品のタイトルから。

「文中の( )の中にあてはまる名前を入れなさい」王木亡一朗
弐杏さんの「文中の( )にあてはまる文字を入れなさい」より。今回のトリ。ボリュームもかなりのもので、もうご苦労様でしたという他ない感じ。中身もフィナーレにふさわしい。オリジナルへの限りないリスペクトと作者のエゴイズムを見事に両立させた怪作。ある意味で、この企画のシンボルになるようなすごい作品だと思いました。


まあ、あれです。蓋を開けたら意外にバランスのいい本になったんじゃないかと思います。これまでも電子雑誌やアンソロジーはあったけれど、ここまで踏み込んだ企画ってそんなになかったと思うんです。「夏100」や「このセルパブ」とは違うし、ノベルジャムとも違う。
もうプロレスですよね。お互いに息を合わせてギリギリを攻めていくパフォーマンスっぽい。
ぜひオリジナルと合わせて読んでほしいです。

https://sites.google.com/view/mushup-vol1/

こっちのランディングページからチェックできますし、是非是非。
posted by ヤマダマコト at 22:20| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月11日

勝手にKDP本レビュー★62 斎堂琴湖「舞台女優」

まあ、あれですわ。すごく面白かったです。
斎堂琴湖さんの「舞台女優」。これはKDP本の個人的オールタイムベストを選ぶとしたら、候補に上がりそうな作品です。
元々、斎堂さんの作品は、長編ミステリの「箱庭の花」がすごく面白くて、「月下迷夢」とかもなかなか良作だなあ、と思ってて、密かにチェックはしていたんですよね。どちらかというと長編が面白いイメージ。
んで、「箱庭の花」については学校を舞台にした先生が主人公のミステリだったんですが、とにかく、ストーリーの組み立て方が上手くて、「分かってる人だな」という印象をすごく受けたんですよ。キャラクターも個性的で、しかも掘り下げも良かった。

けれど、今回の「舞台女優」はもっとエエぞ。
「箱庭の花」は人間ドラマ重厚さとトリックのギャップが少しだけ気になったんですが、これは最初から最後までパーフェクトなストーリー。
内容は、15年前に引退した大女優・羽柴塔子を中心とした芸能界のある人間関係の中に、羽柴と奇妙な縁のある主人公、零細出版社の営業担当・梨本有理が巻き込まれていく物語。
突然、電車内で響く着信音から始まる完璧な導入から、読み進めていくと約5分おきに意外な展開が起きる感覚で、どんどん続きが気になって読んでしまうんですよ。テンポもよく自然な展開の中で、思いもよらないハプニングや予想の展開が次々出てきて、これが止まらない。すげー面白かった。
その辺りの技術がすごいんですが、さらにミステリとしても良くできていて、このノンストップな展開の中で、ごく自然にどんどん伏線やらミスリードを仕込んでいって、クライマックスに持っていくという。
この辺はもう読者の視線を読み切ってコントロールしているというか、うまく遊ばれてる感じがする。誰もが驚くような叙述トリックの大技かますのも良いですが、こういう細かい気配りで読ませる技術って、むしろ、すごく高度で難しいと思うんですよ。

エンタメはキャラさえ良ければ大体の失敗はごまかせるくらいキャラクターが重要なんですが、これも良い仕事なんですね。
魅力的なキャラクターでぐいぐい引っ張っていくタイプではなくて、どんどん感情移入させていくタイプ。主人公の有理はもちろん、羽柴塔子も、その運転手の小原も石田課長もみんな良いキャラ。奇抜な設定はほとんどないんですが、劇中で丁寧に掘り下げて人間臭さも感じさせて、生き生きしてくるんですよ。心理描写も巧みで、これはNHKでも民放でも連続ドラマにしたら視聴率とれそうな気がするんだけど。
ちなみに、私の脳内では、なぜか石田課長は森本レオ、小原氏はブルゾンちえみのバックの兄ちゃんの派手な方に変換されていました。どうでもいいけど。
人物以外の描写も巧みで、劇団周辺を含む芸能界の雰囲気とか、良くできてると思うし、有理の仕事ぶりもリアル。そういった地に足が着いた描写があるからこそ、大胆なギミックも生きてくるんだなと。締めくくりも見事。舞台劇の脚本みたいに小粋で、単なる暗喩もこれだけ綺麗に決めるとカッコいいな、と。

これは嫉妬もないですよね。自作と比べてちょっと凹むけど。だってみんな良いんだもん。降参っていう感じ。
これはもうプロットの時点で相当な精度でストーリー組んでるわけで、途中でズレることも許されない。あるいは後から丁寧に調整してるんだろうか。いずれにせよ、さり気ないんだけどすごく手間のかかる高度なことをやってるんですよ。私には無理。
強いて文句を言うなら、「表紙がおとなしすぎねえか?」くらい。これはもっと押しが強くても良いと思う。ていうか、ランキング見てても、もっと売れていなきゃいけないでしょうよ。

「とはいえ、ただの人が死ぬだけのミステリなんでしょ?地味じゃね?」っていう人もいるかもしれない。でも、普通の醤油ラーメンだって、店によって味が全然違うし、そのシンプルな一杯に込められた思いや仕事量も違うっしょ。それが評価に繋がるでしょ。だから「舞台女優」をただのミステリだと思う人は回れ右でよろし。違いの分かる錦織健みたいな男になって出直しといで、と言いたい。ていうか読めば誰だって分かるし楽しめると思うんですけどね。斎堂さんはすごく気配りしてるし。



そもそも2014年リリースですからね。私もずっとスルーしてたのは不覚だし、今更こんなん書いているのも逆に失礼な気さえする。これだけの作品ですし。
私もこの3年半でそれなりにKDP本読んでますが、まだまだ読んでない作品はたくさんあるし、きっとこういう埋もれた傑作もたくさんあるんでしょうね。業が深いというかなんというか。
なんで、まあ、ぜひ読んで欲しいです。たった300円だぜ。これで。
posted by ヤマダマコト at 11:45| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする