2018年03月06日

坂東眞砂子「くちぬい」面白かった

というわけで、坂東眞砂子の「くちぬい」。
これはエグい。いつもの坂東的なエログロはないんですが、なかなか面白かった。
個人的に、この人って特に初期の伝奇ホラーが好きで、なんでかっていうと、私好みの厚塗りで饒舌な文章はもちろん、国内の作家でもっともスティーヴン・キング的なことをやれているから、なんですよ。キングフォロワーと言われるエンタメ作家は多いですが、キングのモダンホラーを「アメリカ南部の田舎町のご当地オカルト小説」と捉えた場合、その手法をもっとも理解して、日本の古典的な伝奇ものに落としこんだのは坂東眞砂子なんじゃないかと密かに思っています。
とくに初期キングは、キャッスルロックやデリーなど、敬虔なプロテスタントが多く保守的で閉鎖的な60年代メイン州南部の田舎町というリアルな下敷きを作り上げた上で、そこに怪異を持ち込むわけですが、一方の坂東さんは閉鎖的で過疎化が進む90年代の四国の集落を丹念に描きつつ、そこに息づく怪異を描く。その日常のリアルさがどちらも肝だし、他の国産キングフォロワーはミステリや青春小説に落とし込んで傑作を生み出しても、ここまでキングを踏襲することはなかったと思うんです。おそらく小野不由美さんが例のオマージュで近いことをしているくらい。
一方で、あんまりリアルじゃなかった新潟の方言が気になった傑作「山妣」以降は文章が軽くなってきた感があるのと、さすがに女性の愛欲的なテーマに飽きてきたんで、それ以降はあんまり読んでこなかったんですよね。こう、もっとヤングでナウいものなら読みたかったんですけれども。

んで作品の話。
東京から高知の田舎に移住してきた中年夫婦が、集落の風習を無視したために地域の年寄りとトラブルになるという、それだけの話なんですよね。設定とかあきらかに得意の伝奇ホラーなんだけど、そっちにはいかず、サイコサスペンスに行きそうで、そっちにもいかず。
シンプルなストーリーなんですけど、集落の雰囲気がリアルなのと、夫婦の微妙な空気など演出でちゃんと面白いエンタメ小説に仕上げている感じです。旦那の鈍感ヘタレっぷりも、消防団や公民館での草刈り後の宴会もリアル。集落なら公民館より集会所や公会堂の方がよりリアルな感じもするけれど。
基本的に夫婦と老人たちのトラブル、さらにサブプロットとして役場の若手職員と、かつて巨額横領で刑に服していたじいさんのストーリーがあり、これが微妙に絡み合っていく構造。奥さんの夫への不満やセックスレス的なアレの描写がくどいほどあり、役場の彼に手を出すのかと思いきやそんなこともなく、役場の彼は彼でさして役には立たず、という坂東作品っぽくない展開が面白いっす。
加えて、移住の動機の一つに奥さんが福島第一事故の放射能を恐れて、というのが興味深いです。演出単体としてみたらチープで底が浅く首を傾げたくなるんですが、一方で、意識高い中年女性にありがちといえばそうだし、放射能の不可視の恐怖を集落の目に見えない人間関係が生む悪意になぞらえているというのはいいなかなか秀逸。
あと、「人が過密する都市部の若者がおかしくなる」というのはありがちだけど、「一方で年寄りしかいなくなった田舎も狂い出す」という考察はすごく面白い。私も地方で働き、地方をテーマに小説書いてるけど、そこまで考えが及んでいなかった。
で、電子版のあとがきというか作者の手記を読んで、この作品が実話ベースということに驚きつつ、田舎ならありそうだなと思ってしまったり。



私個人としては、そういう切り口の目新しさやエンタメとして駆使されている小技の数々はとても参考になりました。ただ、後味の悪さからして、賛否がありそうだよな、とも思う。
とはいえ、地方への移住を考えるセカンドライフ世代はぜひ読んでほしいっす。田舎の年寄りの闇が怖すぎるし、なかなかリアルでびびる。
ラベル:Amazon Kindle
posted by ヤマダマコト at 15:25| Comment(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月02日

なんとなく近況など

「テーブルの上のスカイラーク」の無料キャンペーン以来久しぶりの更新です。
率直にキャンペーンは上々でした。KU導入以降、有料販売や無料キャンペーンは低調でしたが、久しぶりに2015年ころを思い出すような動きでとても良かったし、リニューアル後は天化シリーズや山彦に近い動きをしていて、頼もしい限りです。ボリューム的に原稿用紙で650枚程度の作品としては期待以上かなと。もっとも長期視点で見ないとどうにもならないというか、2週間やそこらで判断するのは早計ではありますけど。



他に近況。
子どもがおまけのカードを集めてるカルビーの「野球日本代表・侍ジャパンチップス」で、なぜか広島の菊池とソフトバンクの内川しか出ない呪いにかかった模様。巨人選手のカードが出ない。小林はあるけどそれ以外はゼロ。集めた枚数を考えると、確率的におかしい。どっかのゲームじゃないんだから。もう菊池いらねーよ、菊池、菊池。これむしろ菊池への風評被害なんじゃと思うくらい菊池が出るんですよ。
ていうか父親の方がムキになってるのがなんとも。でもペナント版がそろそろ出そうだから、侍ジャパンはもう終わりなんだろうな。菅野とか坂本欲しい。

なんとなく、kindleは商業の小説を大量に購入し読んでます。特に、次に書くクマ小説の前にチェックしときたいヤツ中心に、土着色強めなのをチョイスして読み漁ってます。中でも印象に残るのは坂東眞砂子の「くちぬい」。例の猫虐殺騒動があり震災がありで読んでなかったんですよね。亡くなられる3年前、決して長くじゃないキャリアでいえば晩年に差し掛かったころの作品になるんでしょうか。これが良い意味で、あの作家の闇が凝縮されていて面白い。あとで暇なときにでも感想書くかも。

んで進捗ですね。うん。平常運転、平常運転。もうすぐクマ小説のプロットが上がります。思ったほどローカル色はでないかも。なんちゅうか山彦とはテーマが違いますし。今回も下田が 舞台なんですが、その山間の集落の感じとか、そこに住む人の息遣いとか意識して描いていきたいという思いはありますね。
思ったより早く進んでるので、水面下で進んでる企画についても簡単なプロットを作っておこうかなと考えたり。

今のところ、2018年は大きなアクシデントもなく順調に進んでますね。セールスもほぼ予測に沿ってる。どうせ、どこかで誤算が出てくるんでしょうけど、静かで平和なのはなによりです。
ラベル:Amazon 日記
posted by ヤマダマコト at 22:15| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月24日

進捗&無料キャンペーンやってます

秋以降リリースするクマが暴れる作品のプロットを書いています。
基本、いわゆるミステリ的な様式を残しつつ、本州なのにヒグマが暴れまくりなクレイジー系B級パニック小説的な感じです。ただ、あんまりチープにはしたくないんですよね。基本的には、いつもの作風でより重め。ネタはB級ですがあまり軽くはしたくないというか。ツキノワグマの方がテーマとしては「人と森」みたいなネイチャー系に持っていけるんですが、すでにそっちは掘り尽くされているし面白くないし、むしろ「なぜヒグマ?」、「本当にヒグマ?」というエクスキューズの方が物語の軸は作りやすいし、面白いなと。もちろん、それ以上に、ホラーとしての怖さとか、こう集落が血に染まるスプラッター感は、ヒグマだよね、的な。
それに本州のマタギの末裔がヒグマと対峙なんてドリームマッチっぽいし。
初期案はヒロインがマッシブで無口で怖い人だったんですが、それではストーリーが進まないから少し柔らかくしてみたり、クマ捕獲用の檻を製造する町工場の社長は女性のイメージだったんですが女性割合多めのために男に変えようか検討したり、そんなことをしながら進めています。今のペースなら来月上旬にはプロットがひと段落する気がします。



あ、そうそう。とりあえずブログでも告知です。
明後日の夕方辺りまで、リニューアルした「テーブルの上のスカイラーク」が無料で読めます。スマホでもタブレットでもアプリがあれば読めるので是非是非。
すでに廃版になった分冊版を持っている方はこっちに入れ替えてもらうと嬉しいです。表紙も全部入りでちょっとデラックスですし。それにRangerさんの表紙もやっぱり見栄えがして良いと思うんですよ。私の作風的に、こういう表紙絵は意外に思われる方もいるようですが、そこは昨今、書店に行くとラノベコーナーでなくてもキャラクターを前に押し出した表紙いっぱいありますしね。この作品には合うんじゃないかと。
今年最初のキャンペーンということでうまくいけばいいな、と思いつつ。
posted by ヤマダマコト at 19:52| Comment(0) | KDP | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする