2017年04月10日

ヤマダ氏、恒川光太郎「私はフーイー」を読んだった

ちょうど、恒川光太郎の「私はフーイー」を読了したので感想でも。
恒川光太郎といえば、デビュー作「夜市」がホラーで短編集のハンデを乗り越え直木賞候補になり、とんでもない人が出てきたな、と思いきや、そこからは堅実に作品を積み重ねつつも、ジャンルのせいかいまいちメジャーになりきれない、だけど人気はかなりあって仕事の絶えない作家。
プロ野球に例えると、ロッテの唐川とか去年までの巨人坂本っぽい。出てきた瞬間は、いわゆるJホラーブームの後の日本のホラー小説界隈を一変させるだけのポテンシャルがあったというか、今も十分にすごいけれど、でも、ファンの理想はもっと高いところにあるというか。

私も初期の頃はすごく好きでしたし、今でも影響は少なからず受けてるんですよ。特に短編は。
ただ海外のポリネシアっぽい島を舞台にした短編連作「南の子供が夜いくところ」とか、それはそれで面白かったんですが、ちょっと南国の「陽」の方に行きすぎてしまったというかね。微妙に日本の土着文化を下敷きにした奇譚、というか、それまでの趣きが薄れ、恒川作品っぽくなかったし、そのあとの短編集「竜が最後に帰る場所」は、この作者は、むしろ不条理SFやファンタジー方面に向かうのかな、と思い、最近は読書の優先順位は必ずしも高い方ではなかったんです。
サンカをテーマにした「山彦」を書いたあとに、あの恒川がサンカをテーマにして書いていると聞き「金色の獣、彼方に向かう」を読んだくらい。その時に、やっぱり、この作者の魅力というのは、こういう日本の土着文化に結びついた雰囲気なのだと思ったし、改めて凄さを実感しました。サンカに対するアプローチもさすがに商業で食ってるプロの仕事だな、と。

で本題の「私はフーイー」。
ちょうど、年始に某所でハードカバーの中古本を手に入れたんですよ。沖縄をテーマにした怪奇短編集ということで、KDP原作開発プロジェクトに参加する身として参考にしようと思ったわけです。
同書に収録されているのは、「弥勒節」、「クームン」、「ニョラ穴」、「夜のパーラー」、「幻灯電車」、「月夜の夢の、帰り道」、そして表題作の「私はフーイー」。
どれも近現代の沖縄を舞台にしていて、とくに、まだ琉球王国の名残が残りつつ日本になっていった明治や大正、昭和初期の描写がすごく印象的で、逆に、アメリカ占領下の文化については割と弱め。「南の子供〜」の南国テイストはほとんどなく、むしろ、恒川作品の中でも土着色が強め。もちろん、それは我々の想像する本土の文化ではなく、琉球の土着文化なんですけれど。多分、この人の手にかかれば、東北だろうがアイヌだろうが、全ての土着文化が幻想的な怪奇物語に変わってしまうんだろうな、と思いました。
ハンサムで軽い文章も読みやすいし、中高生でも楽しめると思うんですよ。

1番それを感じさせるのは「弥勒節」。導入がらしくない気はしましたが、ヨマブリの描写や映像的なクライマックスなど見事というほかないです。音楽が聞こえてくるんじゃないかと錯覚するほど。「クームン」も、すごく沖縄的な妖怪で面白い。ここらへんのイマジネーションって、やっぱり才能なんだろうな。

ただ、筋運びについてはバラつきがあるというか、この作者は、デビュー作の「夜市」、「風の古道」、あるいは初長編の「雷の季節の終わりに」あたりはまだしも、最近はプロットを書かずにつらつら書いてるんだろうな、という感覚がすごくありました。正直、「ニョラ穴」、「夜のパーラー」については、現在の沖縄っぽさをバリバリ感じる描写が凄まじく、途中までは上手いし、面白いんだけど、どちらも最後に焦った感がある気が。特に「夜のパーラー」は沖縄の、あの夜の空気感を清濁含めて汲み取ったセンスが秀逸なだけに惜しかった。最後の最後でちょっと投げやりな感じがした。

ちなみに私のお気に入りは表題作の「私はフーイー」。琉球王朝末期から沖縄戦までの100年強を舞台にしたニライカナイから流れ着いた神秘のヒロイン、フーイーの輪廻転生の物語。短編にしておくにはもったいスケール感と魅力的な登場人物で、もうメロメロな感じ。
そういえば「秋の牢獄」の時にも感じたけれど、作者は北村薫が好きなのかもしれない。あの時も北村作品の「ターン」を思い出したんですよね。ループもの云々はもちろん、人の悪意の出方とかね。今回は「リセット」っぽい。



あと、余談なんですけど、この本のタイトルと表紙絵が微妙に好きになれなかった。作品の中身と合ってない気がしたんですが、文庫化で「月夜の島渡り」に改題。表紙も一新。これは角川さん英断ですわ。ハードカバーはちょっと、ね。
もちろん電子書籍は文庫準拠です。
posted by ヤマダマコト at 23:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月08日

新作「ユイカ」について

たまには新作の話。
ちょうど推敲も大詰めに向かっております。
タイトルは仮ではありますが「ユイカ」。
サイコスリラーというか、いわゆるモダンホラーの王道的なお話です。10万字ほどの短めの長編で、今回は凝った仕掛けはないです。

越後平野を流れる中ノ口川沿い、燕市と旧白根の間にある果樹栽培と養豚が盛んな架空の町を舞台に、ちょっと異様な母親を持ついじめられっ子の少年、火星(まるす)が経験する恐怖の夏休み的な物語。

私がKDPを知る以前、山彦を書き上げる間際にネタを思いついたんですよね。プライベートでいろいろな親子を見て、考えることがあったわけです。現代日本の地方在住の子どもから見た母親、母親から見た子ども。その関係性が歪んだ時に、そこにホラーの入る余地があるんじゃないかと。
これは社会的なテーマもはらんでいて、オリジナリティもあると思い、公募用に書いたんです。10万字っていうのも、公募用を視野に入れた結果です。山彦の物量に懲りたせいもないことはないですけど。
ただ、8割ほど書いたところで、KDPと出会ったために一時中断していました。
以来、KDPでのリリースタイミングを探っていて、山彦リリース後に、スカイラークとどっちを出すか迷い、後回しになってたんですね。その時は映画のピンポンをテレビで見て決めたんですが、それ以外にも、本作は内容がエグいのでブランディングの意味でもリスクがあったんです。山彦の後だし無難で健全なスポーツものでいこうや、と。
今回、おかげさまで健全なエンタメ作品の金色天化が予想以上に評判が良く、ここで変なものを出しても人格が疑われることはないだろうとリリースに踏み切ることになりました。ギャンブル的な側面が大きいです。このジャンルは調べてみたらハイレベルなKDP本多そうなんで大変ですけどね。
正直、書き上げた直後は、雑というか目配りができておらず空回りしている気もしましたが、推敲中の感触は意外に良いし、何より、結果的にすごく自分らしいものになってきた気がする。
私自身は金色天化より好きですが、多分、そう思うのは少数派だと思われます。案外、スカイラーク好きな人は合ってるかもしれない。ストーリーもシンプルだし、描写重視だし。
まあ、どんな公募に私が出すつもりだったか予想できれば、だいたいの作風は予想できると思います。
ちなみに公募をあきらめた理由は賞そのものが変質し審査員も変わって、出す意義が見出せなかったからです。だったらKDPで、という。黒い家とか夜市の頃なら迷わずエントリーしてたんだけれども。
posted by ヤマダマコト at 23:22| Comment(0) | TrackBack(0) | KDP | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月07日

このカップ焼きそばがすごい!2017「東洋水産 俺の塩辛口明太子味」

というわけで俺の塩辛口明太子味です。大盛りしかないのね。

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明太子系はパスタ風にまとめられるというか、カップ焼きそばとは相性がいいんで、各社出しているし、どれもハズレなし。そういう意味ではすごく安定しているんですが、一方でどのメーカーも似たり寄ったりというか。要するに、明太子パスタっぽいんですよね。
その中で塩焼きそばのパイオニア、俺の塩がどういうチューニングをしてくるかがポイント。

とはいえ、塩焼きそばの明太子なんで、他社と系統は一緒。明太子のシーズニングに明太子風味の塩ダレ、マヨネーズも一平ちゃんと同じような感じ。むしろ、刻み海苔とかのトッピングは一切ナシで見た目はしょっぱい。
ただ、俺の塩特有の極細麺はもちろん、わざわざ「辛口」と銘打っているだけあって、結構辛い。個人的には、一平ちゃんカラムーチョのちょい下くらい。ちょうどいい塩梅の辛さだと思います。
割と予想の範疇だけど、美味しいですわ。この間のペヤング背脂MAXもそうだけど好きな人はケース買いしちゃう人もいそう。個人的には、こっちの方が魅力的です。

何度も言いますが、大盛りじゃなければもっと良かった。

(追伸)2度目に食べた時には刻みのりが入っておりました。あったほうが絶対いいですわ
posted by ヤマダマコト at 13:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする